Iromachia

「死を招く 紫水晶の瞳

あの者と戦ってはなりません」

「何故です、母上」

「あなたは 平凡な生より

英雄としての 死を望むというですか？」

「母上、死すべき者達が、私を待ってるのです」

「いかないでおくれ！あの者は」「ハッ」

「レオン！嗚呼 レオンティウス！」

「アメティストス将軍に続けぇ！」

【歴史は駈け廻る】

「小雨がちらちらと 煩わしいですね」

「安全圏からしか撃てぬ 腰抜けどもめ」

「弓兵は 相手にせずとも良い

オリオン亡き 今、奴らはただの雑魚に過ぎん」

「閣下、敵の指揮官はどうやら」

「猪突猛進しか知らん バカのようですね」

「シリウス！お前の部隊は左！

オルフ！お前の部隊は右から廻れ、挟撃するぞ！」

不死なる者が 薙ぎ払う

紅い緋い 死の渚

今は 物言わぬ屍

彼等にも 物語があった

されど ささやかな ささやかな

希望(みらい)さえ 希望(みらい)さえ

運命は ミラは

赦さなかった

変わり果てた 彼等に

接吻(くちづけ)する者は

愛する 恋人(ひと)ではなく

飢えた 禿鷹のみ

冥界の剣エレフセウス (ハデス クシフォス エレフセウス)

死を与える死神 (ホゥトン フォボス セ サナトス)

一匹狼エレフセウス (モノス リコス エレフセウス)

同胞に死をもたらす (フォルテ ヘレネス ヤ タナトス)

「久しいな、イーリオンよ

我等、忘れはしまいぞ！

お前を守る楯が

誰の血によって 築かれた物かをなぁ！」

「将軍閣下ー！」「突撃ぃぃぃぃっ！！」

「陛下！イーリオンが落ちました！」

「何！」

「件のアメティストス率いる、奴隷部隊の仕業のようです！」

「馬鹿な、アネモスの加護篤き、あの城壁を」

「アネモスの軍属、英雄イーリアスをも討ち倒す程の武勇！

奴もまた陛下と同じく、神の眷属なのやも知れませんぞ！」

レグルスは 東夷(バルバロイ)に 備えろ 「はっ！」

ゾスマは 北狄(アマゾン)に 備えろ 「はっ！」

カストルは 聖都(イリオン)へ 供を 「はっ！」

我等 【雷神に連なる者】 (アルカディオス)

皆 生きて また逢おうぞ！

『運命は 残酷だ

されど 彼女を怖れるな

女神(ミラ)が 戦わぬ者に

微笑むことなど

決して ないのだから』

『人間(ひと)は 皆 何時(いつ)までも

無力な奴隷ではない

戦うのだ 気紛れな 運命(神)と

未来を 取り戻す為』

The paths of the two beasts have crossed

「奴がアルカディアの 勇者デミトリウスが仔」

「憎き地の国王 レオンティウス！」

「ミーシャの仇！私が相手になろう！」

「望むところだぁ！」

奪い合う 時代(とき)の覇権

永遠(とわ)なる 調べよ

駈け廻る 趨勢(すうせい)

生命(せい)は 流星

刹那の 煌(きらめき)

死せる者達が 駆け抜ける

神話の時代よ

屠り合う 英雄

死して 冥友(めいゆう)

去り逝く 運命(さだめ) (レオンティウス)

「アメティストス。 へレーネスのお前が何故

バルバロイの侵略に加担するのだ！」(エレフセウス)

「祖国が私に何をしてくれた

愛する者を奪っただけではないか！

嗤わせるな！やぁっ」「おやめなさい！」

「は、母上っ！」

「レオン エレフ おやめなさい、っぁ」

「母上っ、ミラよ！うっ」

「私を置いて逝くな！許さんぞ！

レオンティウス！うっ！ぐっ」