Credits
PERFORMING ARTISTS
松岡宮
Performer
COMPOSITION & LYRICS
松岡宮
Songwriter
Johann Sebastian Bach
Composer
Lyrics
2019年 秋
上野から仙台まで常磐線で向かう
いわき駅で富岡行きの列車に乗り換え
もうすぐ終点 富岡駅だ
いわき 2019
いわき 2019
点字ブロックのあざやかな黄色
新しい富岡駅から見えたものは
海だ
階段を上って跨線橋の窓から
見えたものも 海だ
工事中の黄色と黒の踏切のバーの
向こうに見えたものも
海だ 海だ 海だ
開通を待つ踏切を背に
わたしは代行バス乗り場へと向かう
ウィンカーを鳴らしながら
青信号で右へ曲がり
途切れてしまった常磐線を
結びなおして走ってる
6号線を 代行バスは
そして浪江まで
背筋を伸ばして両手を広げた
送電塔の群れが
荒野の果てまで連なりながら
海へと続いている
6号線を 代行バスは
そして浪江まで
いわき 2019
いわき 2019
わたしを乗せた代行バスが出発した
「バス車内の写真撮影はご遠慮ください。」
それからシートベルトを締めるように
添乗員は言った
青信号を右折したバスは
国道6号線を北上する
細い川を渡る
赤や黄色に色づいた木々
風に揺れるススキの野原
オレンジ色の重機の群れ
ホームセンター ゲームセンター
代行バスがまた 川を渡る
透明なサーファーが並んで走ってる
「ようこそ福島へ」と笑顔で手を振って
6号線を 代行バスは そして浪江まで
透明なランナーが並んで走ってる
ほどけてしまった靴の紐を
結びなおして走ってる
6号線を 代行バスは そして浪江まで
透明な常磐線が並んで走ってる
透明なひたち号も並んで走ってる
夜ノ森駅 大野 双葉 そして浪江まで
透明な常磐線が並んで走ってる
透明なひたち号も並んで走ってる
夜ノ森駅 大野 双葉 そして浪江まで
いわき 2019
いわき 2019
2020年3月14日、常磐線全線再開通。
代行バスはその役目を終えた。
Written by: Johann Sebastian Bach, 松岡宮